お見合いの相手の金田は、自信過剰な男だ。


詩織の趣味が読書だと知ると、自らの愛読書のタイトルを聞きもしないのに述べ始めた。


「そうですね~僕が読んでいるのは…
『マネー・トッププラン』『M&A処世術』『株取引マジック』……」

「お金の本ばかりなんですね……」

「まぁ~結局、世の中は金を持っている者が勝つ世界ですからね♪…僕と一緒になれば一生勝ち組を保証しますよ♪」

「それが幸せなんですか?」

「それ以外の幸せがあるとでも?」


まるで、世界が自分を中心に回っているかのような口振りに、詩織は言いようのない嫌悪感を抱いた。


やがて、部屋の襖の向こうから“失礼します”という声が聞こえ、女中に化けたひろきが料理を乗せた盆を持って現れた。


「お料理をお持ちしました。」