「詩織さんがお見合いとは、初めて聞いたよ!」

「ねえ♪ねえ♪相手はどんな人?」

「耕太君、かわいそうに……」


詩織の心境を知らないシチロー達は、それぞれ好き勝手な事を言って盛り上がった。


しかし、てぃーだだけは詩織の沈んだ表情にいち早く気付いた。


「詩織さん…そのお見合いは、詩織さんの希望では無いのね?」


その問い掛けに、詩織は無言で頷いた。


「そう……きっと相手はイケメンじゃ無かったのね……」


子豚が同情するように呟いた。


「相手の方はIT企業の若い社長さんで、顔は唐沢寿明似…愛車はBMWです……」


その言葉に驚く子豚をよそに、詩織は話を続けた。


「私の今までの人生は、幼い頃からずっと父の書いたシナリオ通りに演じる役者みたいなものでした…それがどんな希望にそぐわないものであっても、逆らう事は許され無かったんです。
でも、もう嫌なんです!…進路も恋も自分の意志で選び、自分の力で成し遂げたいんです!」


アルコールの勢いも手伝ってか、普段は冷静な詩織もこの時ばかりは瞳に涙を浮かべ、熱い語り口調になった。