「その本は、書店で買って下さい!」


「え?・・・・」


予想外の答えに詩織は驚いた。


いや…それよりも驚いたのは耕太の方だった!


耕太は、詩織の願いに快く応じるつもりでいたのだ。



それなのに、まるで一瞬誰かに魂を乗っ取られたかの様に、意志と正反対の事を……


(どうしてあんな事言ってしまったんだろう……)



どうして『白いジャージ~先生と私』を買って下さいなんて……




『白いジャージ~先生と私』……







全国書店で絶賛発売中☆





一旦途切れた会話は続かず、詩織は“そろそろ行かないと”と、ベンチから腰を上げ家へ帰って行った。


独り残された耕太の寂しそうな背中を、月あかりがいつまでも照らしていた。