詩織の家の前に着いた耕太は、なおさらに憂鬱になってしまった。


詩織の自宅である『北条家』が、耕太の想像を遥かに越える大邸宅であったからだ。


詩織の父親はきっと、かなりの資産家か相当な地位の高い役職に就いている人物に違いない。


詩織の写真を初めて見た時の
『良家のお嬢さん』
というシチローの見立ては、まんざら間違いではなかったようだ。


(もっと良い服を着て来るんだった……)


ジーンズにタートルネックのセーター、そしてその上にオレンジ色のフリース…オール『ユニクロ』製の今の服装に、少し後悔したがもう遅い。


耕太は大げさに咳払いをした後に、意を決してインターホンのボタンを押した。