「ああ~っ…どうしよう……」


時刻は午後8時を過ぎ、空にはまんまるい月と冬の空特有の美しい星達が瞬いている。


そんな中、耕太はシチローから渡された推理小説の下巻を持って、詩織の自宅へ向かって独り歩いていた。


いや…本当は、森永探偵事務所の4人が少し離れて後を付けていたのだが、耕太は全く気付いていなかった。


ただ本を届ければ良いだけの話だが、昼間シチローが言った言葉が耕太に大きなプレッシャーとなってのしかかっていた。



『耕太君、子供の使いじゃ無いんだからな!
これは君にとってまたとないチャンスだぞ♪
分かってるよね♪』


「そんな事言ったってなぁ……」


詩織に会えるというのに、耕太の足取りは重かった。


もし、詩織の父親あたりが応対して来たらどうしよう……


詩織さんが入浴中だったりしたら……


あれこれ考え出したらキリが無い。


そんな耕太とは対照的に、シチロー達はこの後どんなラブロマンスが見れるだろうかと、期待に胸を弾ませていた。


「頑張れよ♪耕太君♪」