傷を受けながら、黄鬼はよろける。









自分の頬から……血が……?










右手で己の傷を確認し、その場で呆然と立ち尽くす。










それを徐々に理解するのと同時に、沸々と怒りが込み上げてきた。











「この……クソ猫!! よくも私の顔を!!! リーダーに見せられないじゃないの!!」









さわ~~~!










怒りを露わにしながら、両の手から怪しい煙を出して、辺りをガスのようなもので充満させた。










これは何かと思うと、辺りの景色の異変に気付く。









道も、木も、草も、岩も……


目に映る全ての景色が、グニャリと曲がるではないか。











これには遠くで見ているオッサンも、何だか気持ち悪くなってオエッとさせる。











「……ニャンだ?」











「フフフフ……これは幻惑の世界よ。この世界でアナタはなぶり殺しにされるのよ。私の最高の技よ」











これはオッサンと眠り猫を道に迷わした技でもあり、相手の距離と感覚を狂わし、千鳥足になってしまう術だ。










喰らったら最後、脱出するにも走る事さえ出来ない。


攻撃も、なすがままに受ける事になろう。











「……」











眠り猫は、何も言わず辺りを見渡す。












「ホホホホホ。乙女の受けた傷どう返そうか? まずはその尻尾を切り落として、そのヒゲも引っこ抜いてやろうかしら」











それを想像しながら、黄鬼は高笑いを続けている