「騒ぐな。誰のおかげで仕事につけたと思っているんだ」
ドスのきいた声が耳元で低く聞こえた。まぎれもなく、武藤の声だった。

　急に吐き気のようなものが出て、和美は武藤の身体を力いっぱい押し返した。

　起き上がり、そこから逃れようとする。

　次の瞬間、武藤の平手打ちが和美の頬に当たった。びっくりするほどの力でソファに和美はうずもれ、頭がくらくらした。

「静かにしろ！こういのはギブ＆テイクだろうが、黙ってろ」
武藤の声も頭の遠くで聞こえた。

　呆然としている和美を、武藤は観念したと思ったのか服を脱がしにかかった。酔っているのだろう、ボタンがうまくはずせずに「くそっ」と舌打ちが聞こえた。

　口を覆っていた手がどけられると、今度は武藤の唇が押し付けられた。タバコと酒の臭いで涙があふれてくる。

＿＿＿どうして、どうして！？

　頭の中で警告の鐘が鳴り響いた。

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