男たちは台所や隣の部屋、洗面所に薄いゴム手袋をして入ってゆく。みるみるうちに、引き出しや戸棚が乱暴に開けられてゆく。

「いったい何なんですか!?」
ようやく現実を受け止められるようになったのか、少し怒った声で雪乃は尋ねた。

 恐怖からなのか、声はふるえていた。

「それ、携帯?」

「え?」
女刑事は雪乃の言葉など聞いてないのか、ソファ前にあるテーブルに置かれた赤い携帯電話を指さした。

「そうですけど」
そう言いながら手をのばしかけた雪乃より先に女刑事はさっと携帯をとると、2つ折りのそれを開き勝手にボタンをさわりだした。

「ちょっと、やめてくださいよ!」
取り返そうと腕をのばした雪乃に女刑事は、
「あなた、現状を理解してないようね」
と、冷静かつ強い口調で言った。