「謙虚だねぇ、マーシーは。んふっ、かわいい」


「そ、そんな。あこがれのRedZoneでキーボードが弾けるなんて夢みたいなことなんです」



そうか、マサシくんはレッドに憧れていたのか。

わたしなんかただの歌詞書きだけど、胸が温かくなった。


それはみんな同じなようで照れたり得意げに笑ったり、嬉しそうにしている。

まだ入ったばりかみたいだけどマサシくんは可愛がられそうだ。



「さて、そろそろ弾くか」


「おっ、待ってました!」



はるかの声とわたしの拍手でそれぞれ準備に取り掛かる。

わくわくしながらその様子を見ていると、そうそう、と陸が口を開いた。



「これから歌の部分はマサシに弾いてもらうことになったから」


「え、そうなの?マサシくん大変じゃない」


「おれは歌えると言ったんだけどな」


「あの、全然大丈夫です!たくさん弾くの楽しいですし」



うちのバンドはいつもアキラがあらかた曲をつくってから作詞をし、さらにみんなで微修正を加えていく。

なのでボーカルのはるかはでたらめな英語で歌うのだけど、これが結構大変らしい。
本人は認めないみたいだけど。



「マーシーは超ピアノ上手いからね~。たくさん賞とかとってるんだよ」


「詳しいね、陸。そっかぁ、すごいねマサシくん」


「へへ、ありがとうございます」



はにかんだマサシくんがキーボードの前に立ち、アイコンタクトをとって。

涼のドラムが合図、音がはじけた。