「お父さんは、今日も
 これからお仕事なのよ」

嘘、つくな。

俺は、見つめる・・・

後部座席に膝をついた俺は
リアウィンドウから、手を振る
大好きな父の姿を見つめる。

二階建ての家に不釣合いな父。

その姿を、俺はずっと見つめ
続けた。

幼い俺でも分る事がある。

それは、祖父が父を無視し続け
父の存在を掻き消し無きものに
する。

格下の宮大工の男などに、大切
な娘を取られた父親(祖父)の
腹の中は、結婚を許したその時
から煮えたぎったまま。

大人げない男・・・