「行ってくれ」

閉まる窓、車は走り出す。

地面に落ちても風に飛んで
いく事の無い、帯がついた
札束。

「ねえ、拾わないの?」

女の声は慌ててる。

「ねえ
 誰かに取られちゃう」

女は辺りを気にしながら歩道と
車道のギリギリラインに落ちた
お金をサッと拾った。

「すごい、分厚い
 ねえ、今の人って?」

「祖父」

「すごい、貴方の家
 お金もちなんだぁ」