「クスッ

 言わなくても
 知ってる

 いいよ
 
 お金ならあるの
 ホテル行こう」

「帰って寝たい」

「わかってる
 
 朝までなんて
 言わないよ」

一瞬だけ口元を緩め、悪戯に
微笑む一夜は女の肩を抱き
路地を抜けて歩く。

明かりの下に辿り着いた時
彼は立ち止まり、ズボンの
ポケットから煙草を取り出し
俯き加減で銜えた。

女の唇から移った口紅は一夜の
唇、その辺りを桃色に染める。

「ごめん、ついてる」