何かを考えながら階段を上って
行く一夜の後姿を正二は黙って
見つめていた。

背中が見えなくなった今も
見つめていると聞こえてくる音

バタン・・・

閉まる、一夜の部屋のドア。

そのドアにもたれ、一夜は
ある男の声を思い出していた。

その男の事を思い出すと

胸糞悪く、反吐が出る。

『イチ・・・』

俺の名前を呼ぶな

クソ爺(じじい)。

アンタの血が俺の中に
流れていると思うだけで
ほんと、だれる。