『いっちゃん

 私はやっぱり、暴力は
 嫌いです
 
 くれぐれも体に気をつけて

 カヤさんと、どうぞ

 お幸せに・・・芽衣子』

その手紙を握り締めて
兄貴は一言、呟いた。

「俺は、なんにも
 
 分っちゃいねえ・・・」

『ガキが欲しいな

 メイ、俺の子
 
 産んでくれる?』

『うん、いいよ

 女の子がいい
 男の子がいい?』

『男・・・』

大切な女を亡くした兄貴は
以前よりも、もっと自分の
殻に入り込み、人を寄せ
つけず、無口になった。

そして、前以上に、もっと
命に、何の意味も持たなく
なった。