階段を下って行く途中
窓が勢いよく開け放たれた
音がした後、何かが落ちる
音がした。

「アニキ?」

急いで表に廻ってみると
芽衣子の部屋の窓から
ありとあらゆる物が投げ
捨てられていく。

それは全て、二人で暮らす為
に買え揃えた物。

そして大半が、一夜の荷物。

「アニキ
 
 戻らなくていいの?」

「ああ」

「メイちゃんともう一度
 話し合った方がよくねえ?」

「いいんだ、行こう」

路駐してある車に乗り込もうと
した一夜に届く声。

「イチヤ

 アンタなんて、あの女に
 くれてやる

 二度と戻ってくんな」