嘘じゃないさ・・・

襖を叩く音がする。

「アニキ・・・
 
 どうした?」

襖を開けて部屋を出る一夜。

「ショウ
 起して悪かったな

 帰るぞ」

「えっ、アニキ

 帰るってどこに?」

寝ぼけ眼の正二の肩に腕を
回す一夜。

「ほらっ、行くぞ」

「えっ、あっ

 メイちゃん
 お世話になりました

 これっ、ありがとう」

包帯の巻かれた手を高く
あげてみせる正二に頷いて
みせる芽衣子。

何も言わず、振り返りもしない
一夜の背中を見つめる。

閉まるドア・・・