あたしはカバンを持って
陽太の部屋から飛び出した。

陽太は追いかけてこない。

寒くて暗い外は
一人で歩くと怖かった。
余計に涙が溢れてくる。

マンションの階段を降り
駅に向かって歩き出そうとした時、
「杏!」と叫ぶ陽太の声がした。

あたしはとっさに車の影に隠れて
陽太がマンションに入るのを待った。

すぐ近くに隠れてる事に気付かず、
陽太はあたしの名前を
何度も叫んだ。

そして何かを地面に叩きつける音がし、
バイクに乗って何処かに行った。