小学生に戻った気分。



「紀斗さん、あそこに蝉いるよ」



「あんま近付くと、しょんべんされんで?」



…本当に?;;

私は冗談とも知らず、電柱から距離を保つ。

微かに明るくなった空。

珍しく自分から、繋いだ手に力を込めた。



「また、ここへ一緒に来れるかな…」



「いつでも連れて来るで。結婚してからやってずっと」



“結婚”―…。

紀斗さんは意識してくれてたのだろうか。

横顔をそーっと見上げると、彼は既にこちらを見ていた。

頭を引き寄せられたと思えば、顎を乗せられる。