「えぇ。

来月には、改めて帰ってくるわ。

その時、また会いましょ」



「………はい」



短い会話をその返事で
締めくくると、あたし達は
再びそれぞれの進行方向に
向かって歩き出そうとした。



でも完全にすれ違う間際で、
苑子さんがもう一度あたしを
呼び止める。



「あ、花琳ちゃん――…」



「……何ですか?」



困惑の目を向けたあたしに、
苑子さんはちょっとだけ
言いづらそうに視線を
さ迷わせてから、



「――花琳ちゃんって……

今はもう、ピアノは弾いて
ないんだっけ……?」


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