どんどん人の波を縫うように進み、駆け、あの後ろ姿を追いかける。

すれ違う人にぶつかる度、謝り方は雑になっていくばかり。


ソレってどう?とか思ったりするけど。何故だか私はアイツを追いかけることを止めなかった。



と。

その背中が急に曲がったビルとビルの脇道。迷うことなく私もその道に曲がった…、が。


あの後ろ姿は、無い。

あれ、可笑しいな…。
確かにこの道に入ったはずなのにと。周りをキョロキョロと見回しながら小首を傾げる私。




「…いない?」

眉根にしわをつくり、ぽつり言葉を零した――



その刹那。


何かによって掴まれた手首を勢い良く引かれ、バランスを崩しよろけてしまう。