それは突然だった


母親だと名乗るあいつが現れるまで
じいちゃんとばあちゃんを自分の両親だと思って生きてきた。

しょうがないよな。
小さい頃から疑いもなく父さん、母さんと呼んできたんだから・・・


あいつ・・裕美は俺を産んで実家に俺を置いて家を出た。
父さん・・・じゃなくて、じいちゃんが教えてくれた。


家を出て何年も行方不明になっていたところ
俺を抱いて突然帰ってきたと思ったら、
俺を置いて出て行ったらしい。


なんちゅう奴だよな・・・
訳も分からずじいちゃんとばあちゃんは俺を育ててくれた。
父さんと母さんとして。


そのままほっておいてくれればよかったのに

あいつは突然俺の前に現れ

俺の気持ちも聞かずに

強引に俺を車に押し込んで
じいちゃんとばあちゃんから
俺を引き離した。


何度も逃げ出して家に帰ったが

その度に連れ戻され、
その度にじいちゃんとばあちゃんが責められていた。


俺のせい・・・
そう思うと
いつの間にか逃げることを諦めるしかなかった。



俺なんかいなければよかった・・・

その頃は毎日そう思っていた