(どうして……こんなになっちゃったのかなぁ……)



彼が大好きで、この世界の何よりも大好きで。

それは彼もきっとそうで、
あたしたちはきっとうまくいっていたんだと思う。


あたしはよく笑ったし、
彼は嬉しそうに色んな話をしてくれたし、
たくさん抱き合って、たくさんキスをした。


甘くて……
頭の奥がじんとして、
溶けてしまうんだと錯覚した。


手をつないで歩いた日は、
いつも晴れていた気がする。


公園で抱き締められた夜は、
星が不思議なくらいに輝いていた気がする。



だけど、だけどあたしは……。




(青空。まぶしい……)



迷いなく晴れた空。

光になりたい……。



平日のお昼時の電車は空いていたけれど、
あたしはドアの所に立って外を眺めていた。


赤い屋根。

青い屋根。

公園。

道路。


ずっと先のあたしと彼の目に、同じ景色が映るだろうか。

あたしに絡みつく不安。

時間はあたしたちをどんどん過去のものにしようとする。


どんなに一緒にいても、もう色褪せている気がするの。
ううん、本当は、一緒にいればいるほど…。


怖いでしょう?

寂しいでしょう?

あなたはひとりでしょう?

と囁く声がする。


あたしは彼の昔の話なんか聞いたってもうおかしくないし、
彼はあたしが妙な行動をとっても驚かない。