シャワーを浴び終え服を着ながら、少し話す。 


残り2、3分だと思う。 

客があたしに何か手渡してきた。 


ゆっくり…あたしは手の中を見る。 



1万円札だった。 


「え…、何?これ。」


この客は、無口だった。 

あたしの問い掛けに答えばするが、あまり自分からは話さない人だった。


その客がゆっくり…話し始める。 


「ありがとう。今日は。」

「…え?」

「ホントに癒された。」

「………。」

「こんなとこで癒されたなんて、淋しいヤツ、バレバレだよね。」 


客が…… 


いや、安藤さんは笑ってる。 

「えっと……、安藤さん?あたしは何も……。」

「キモイ痛客だよね。こんなこと言って、でも……ありがとう。みさきちゃん。」 



伝わってきた。 



ほんの少しかもしれないけど……。 


安藤さんが…、あたしに本気で感謝してくれてる気持ちは……、伝わってきた。 



あたしは……悲しくなった。 


いやいや接客してたのに…。 





やっぱり……仕事なんだ。 

こんな仕事でも……





大切な職業なんだ……。





あたしは手のなかにある1万円札を見つめていた。