あたしはカノンちゃんの傍に、歩み寄った。 

「ねぇ…」 

言葉を掛けながら、あたしは彼女の背中にそっと触れた。
でも、思い切り振り払われてしまった。 

それでも、話し続けた。 


「あたし…… 

もう、いいから…。」 


あたしの言葉にももちゃんとカノンちゃんは、同時に顔を上げた。 

「え……」 

「あ…愛希……?」 


あたしは体中の力を込めて笑顔を作った。


「あたしは……もう、降りる。」 

「………ほ…ホントに…?」 

カノンちゃんは、涙でクシャクシャになった顔であたしの見ていた。
あたしは頷いた。 


「愛希ッ!!おまえ何言って…。」 


ももちゃんがあたしの腕を掴んで大声を出す。 

「ちょっと待てよ!!勝手に決めんなよッッ!!」 

あたしはそっと、ももちゃんの手を自分の腕から外した。そして首を横に振った。 

「あたしは…いい。ホントに…もういいよ。………ごめんね…。」 

「な……俺は……。」 

あたしはももちゃんの声を遮って、カノンちゃんに言った。 

「あかちゃん………大事にね。」 

カノンちゃんは何も言わなかった。

あたしは立ち上がって、玄関に向かった。ももちゃんが後を追ってきた。