「いいんですか? 
金銭感覚、今更変えられます?ツライですよぉ?」

「………そうだね。」 

ふざけるように言っただけのゆいちゃんの言葉に、不安は確かに浮かんだ。

給料が、普通の仕事の何倍も変わるこの仕事に着いて、あたしの金銭感覚は確かに変わっていた。 

居酒屋でもファミレスでも、値段は見た覚えがない。

服を買うときも、財布には何枚も万札が入っていて、惜し気もなく、現金で支払うことができた。

「みさきさん?…ごめんなさい、冗談ですよ?………あたし、自分がなかなか…、あんなことになっても、なかなか卒業できないもんだから……。」


ゆいちゃんは申し訳なさそうに笑う。 
あたしは話し続けた。

「辛くても、ほしいもの買えなくても…、あたしはやめるんた。 
もう、あんな思いしたくないしね。」

なおくんにバレた時の事を思い出した。 
『風俗は無理』そう言われたときの思い、 
もしももちゃんに同じ事を言われたら… 
こんな仕事バレたら……

あたしは耐えられない。 
「お金がないほうがマシ。ももちゃんには絶対にバレたくない。」 

「…………あたしも、1日も早く、卒業できるように…したいな。」

あたしたちはしばらくそのファミレスで飲んだ。 

夜が明けるまで。 


「今日は、代行で帰ろうね。」 
そう言って何杯も何杯も…飲んで、いろんな話をした。 



「店長には言ったんですか?」 

「明日言うよ。今月いっぱいでやめるって。」 

「今月ですかぁ。
じゃあみさきさん、ちょうど半年でしたね。」

「…そっか…、1月からだから…、ちょうど6ヶ月…、半年だ。」 


もうすぐ…… 
あたしの『ピンキー』での6ヶ月は終わるんだ。