「もう…いないみたいですね。」

ゆいちゃんは玄関からそっと、外の様子を見てくれた。 

「………そっか…。」

「確実に…見られちゃったんですか?」

あたしは、さっきの様子を思い出しながら、答えた。 

「…………うん…。見られた。確実に、目が合ったよ。……それに、車も………あたしの車じっと見てた。」 

「そうですか……。」 

ゆいちゃんがあたしの前に座った。目線を合わせて、あたしに言う。

「今日はとりあえず、帰ったほうがいいと思います。あたし、店長に言ってきますから。」 

「…………うん。」 

ゆいちゃんは店長がいる向かいの部屋に言った。 


座り込んでたあたしは、少しずつなんとか心を落ち着かせようとした。

冷静に……ならなくちゃいけない…。

冷静に……。 





少ししてゆいちゃんが戻ってきた。 

「帰っていいですって。店長には『友達に見られた』って言っときましたから。」

「ありがとう…。」

あたしは帰る支度をして、ドアの前に立つ。 


ドアを開けるの……
ドキドキした…。 

「みさきさん。」

「ん?」

「今、みさきさんショックで…落ち込んでるのに、ナンですけど…、よかったじゃないですか、なおくんで。」 

「え…?」 

ゆいちゃんの言ってる意味がよくわからなかった。 

「ももちゃんじゃなくて…、なおくんで。なおくんとの関係、切ろうとしてた時だったワケだし…。」

「あ…。」

だんだん、わかってきた。 

「気を付けて帰ってくださいね。」

「うん…。ありがと。ごめんね、仕事戻って?」

ゆいちゃんは、ニッコリ笑って、待機室を出て行った。   




整理しなきゃならない 
この時でよかった。 





でも… 






できるなら、 





知られたくなかったよ。






この仕事の事だけは 
知られないで終わりたかったな……。