なおくんは電話をとらなかった。 

ケータイを開いてディスプレイを確認して、すぐに閉じた。 

「………とらないの?」

「あ、いいよ〜、電話長いんだよ、コイツ!」

なおくんはいつもみたいにふざけたように言った。

まだ‘抱きしめたい’は鳴り続けている。 


とらないなおくんの行動が、 

鳴り続けている、その曲が、 


誰からの電話かを、あたしに認識させた。 

「あたし、車のなかにタバコ置いてきちゃった。取ってくるね。」

「えっ?愛希ちゃん!?」

「なにか急用かもよ?取ってみれば?」

あたしはそう言って玄関を出た。 


出たのは、なおくんのためじゃない。 

…彼女のためじゃない。 


確認したかったの。 





あたしは走って階段を降りるフリをして、ドアに耳を当てた。 


盗み聞きなんて、最低かもしれないけど……、 

あたしは知りたかった。 


彼女の存在。 

なおくんの気持ち。 





どこからどこまでが、君の嘘………?




なおくんの声が聞こえた。