あたしは運転席に座ったまま、恐る恐るとなりに止まっているももちゃんの車を覗いた。 


いない……? 


自分の車を降りて、ももちゃんの車の運転席の窓を軽く叩く。

コンコンッ 

「………」

車の中には誰もいなかった。 


「愛希…?」


後ろから声がした。 

懐かしい、その声。 

大好きな人の、その声。 

振り向かなくても分かる、 
その声……。 


あたしはゆっくり後ろを見た。






「ももちゃん……。」





ももちゃんは走ってきて、あたしを抱き締めた。 

力一杯、抱き締めた。 

苦しくて、 
悲しくて、 
嬉しくて、 
愛しくて…… 




涙が出る。




21年間、誰とも付き合ったことのないあたしは、きっと心の中で、そんなシチュエーションに憧れていたの……。 


でも、そんなドラマみたいな、少女漫画みたいなシーン、現実にはありえないってわかってるつもりだった。

なのに、今あたしがそこにいる。

夢にも考えられなかったシチュエーションに自分が立っていた。 


ももちゃん…。

抱き締められただけで、涙がでるほど…… 


この人に会いたかったと、 
この人が好きだったと、 

その腕の中で知る。