「大丈夫?運転できるよね?」

なおくんのアパートに着いたあたし達は、車を降りた。

「なんか深刻そうだけど、なにかあったの?」

行きも帰りも運転はなおくんがしてくれた。あたしは運転席に移ろうと歩きだす。 

「うん。大丈夫だよ。ホントごめんね。急に帰ることになっちゃって。」

なおくんと目を合わさずにあたしは答えた。
帰り道、あたしは一度もなおくんと目を合わせなかった。
……合わせられなかった。
何も知らずに急いで運転してくれてたなおくんが、胸に痛かった。



『お互い様な部分はあるはずだ』

『なおくんだって、その彼女に呼び出されたら、あたしよりもそっちに行くよ。』



そう思い込もうとした。
思い込んで、今のあたしの行動を正当化したかった。


運転席のドアをあけようとしたあたしの手をなおくんが握る。 

「なおくん…。」

あたしの体を引き寄せて抱き締めた。 

「明日も会えるかなぁ?仕事終わったらいつもみたくメールしてね。待ってる。」

胸が痛んだ。 

いや、痛む必要ないよ。



「………うん…。ごめんね、急いで行きたいから…。」 

今はいつものようにはいられなかった。 

なおくんの言葉はあたしの中を素通りする。 

そんな自分にさらに胸が痛んだ。

………痛んだよ。