「寒〜いッッ!!」 

「あはは、愛希ちゃん薄着だから。」

「だって海行くなんて思わなかったんだもんッ!」


海か見えてきてしばらく海岸線添いの道を走ってから、あたしたちは適当な空き地を見つけて、駐車した。

車から降りると、潮の香りがした。…海の匂い…。 
4月に入って少し温かい日が続いていた。
その日のあたしの服は、薄手のシフォンスカートに春物のニットのアンサンブル。それにストール1枚を羽織っていただけ。
海には寒い服装だった。潮風が容赦なく吹き付ける。

なおくんは上着を脱いであたしに掛けた。 

「えっ!いいよ!!なおくん寒いじゃん!」

「いいよいいよ。オレ寒くな…………ッファッックションッッッ!!」 

「……ほら〜……。」 

カッコ悪……、ちょっとそう思った。  

なおくんがかけてくれた服をあたしは脱ごうとした。でもなおくんは上着の襟をしっかり掴んであたしに脱がせない。 

「なおく〜ん?」

「いいじゃん着ててよ!なんかドラマみたいで1回やってみたかったの!ちょっとくらいカッコつけさせてよ〜ッッ!!」

「はぁ?…なにそれ。…あははッッ」 

あたしは笑った。 
なおくんのイマイチズレた感じか、あたしの心を暖める。 

「ありがと。」 

なおくんのダウンは暖かかった。温もりがまだ残るそのダウンから、いつもなおくんが付けている香水の香りがした…。 

あたしは目を閉じて感じた。 


自分が羽織っていたストールを取って、あたしはなおくんにそれを巻く。

「どうぞ?」

「ありがと!……あ、愛希ちゃんの匂いがする!……ん〜、いい匂い…。」


「………バカ。」 


あたしたちは浜辺を歩いた。 




手を、繋ぎながら……。