やばい…



心臓がすごくうるさい。


こんなに大きく脈を打ってたら隣の桜にまで聞こえてるんじゃないだろうか、
と俺は不安になった。




「あっ、土方さんっ!!」



その言葉と同時に着物の袂が一瞬引っ張られた。



事に気づいたのは時すでに遅し。



桜は隣にいなく、遠くの方へと人の波に流されていた。



「桜っ!!」


そう言って手を伸ばしても届きはしない。


さすがの俺もたくさんの人には逆らえず、
いつの間にか人の波に乗っていた。







桜の姿はもう見えなかった。