「んぢゃ、ナリア。君が次の王様ね」

「はっ?」

王の一言で始まった突然の女王さま業。

「最初は冗談だって思ったわよ。だって兄様たちがいらっしゃるし何よりお父様はまだ40なのよ」

ブチブチと愚痴る女王の気持ちはわからなくもない。何せ、あの前王ときたらやることなすこと破天荒すぎるのだ。

「今も世界一周旅行に行かれてるもんなぁ。共もつけずに」

護衛隊長としては頭の痛いことだが、あの王のことだから大丈夫だ。ひょっこり何事もなかったかのように帰ってくるに決まっている。

「そうよ!兄様たちもわたくしの王位継承に文句いわないどころか諸手を上げてのお祝いよ!普通なら権力とか狙って小汚く暗殺者とかでも仕向けるもんでしょ!?」

息巻く女王の空になったグラスにのほほんと護衛隊長が真っ赤な液体を注ぐ。

「君に似てるから、権力に興味がないんだろ。1番上のナタル王子は植物学者、2番目のシリアル王子は町のパン屋の娘に一目惚れしてパン職人への道をまっしぐら。3番目のハワード王子は歴史学者になられて早3年。皆様、自由に生きていらっしゃる」

「そうなのよー!私に女王業なんて無理なのにぃ!」

机に突っ伏して嘆く女王、もとい幼なじみに隊長は嘘偽りない賛辞を口にする。

「君は王に相応しいよ。小国の我がナテリアが他国の支援をほとんど受けずにこれほどまでに豊かなのは君の手腕の賜物だ」

「違うわ。私だけの力じゃ、国は成り立たないわ。国が栄えているのはみんなが頑張ってるからよ」

顔を上げた幼なじみはいつの間にか、女王の顔になっていた。

「だからここまで国は繁栄したの。血の流れない平和な国になった」