「オウ!」

本の雪崩を片付けて図書館長に謝ってちょっと凹んだリティアだったが、外にいた彼を見つけて目を輝かせた。

『また熱中し過ぎたのだな』

「エヘヘ。だけど精霊王との儀式の手順がわかりました!これでお会い出来ます!!」

リティアは彼の首筋に顔を埋めた。やわからな鬣が彼女の頬を撫でる。

『すまないな。わたしがもっと協力出来ればよいのだが…』

リティアは首を横に振った。

「未熟なリティアがいけないのです。リティアは聖獣王と契約をした巫女姫。巫女姫としての力が及ばないから……」

リティアは王から身体を放す。

「王をこのような獣の姿にしてしまったのです」

―百獣の王ライオン

太古の昔にいたという伝説の獣。

本来ならば人の姿のはずの王が獣の姿でいるということは、巫女姫の力不足ということ。

『気に病むことはない。そなたは知らぬかもしれんが、我はこの姿を気に入ってるのだ』

そなたの顔がすぐに見えるからな、と微笑む王にリティアは抱き着いた。

「話は終わったかい?」

「ロア!」

「リィの大好きなトスマのサンドウィッチ買ってきたよ」

掲げた袋にリティアは目を輝かせた。

「ありがとうございます!そうでした!もうお昼ご飯の時間でした」

「町の外れに景色のいい丘があったからそこで食べようか」

「はい!」

満面の笑みを浮かべるリティアは紙袋を受け取ると走り出した。

「転ばないでよ」

「大丈夫です!」

ぴょこぴょこ跳ねるリティアに聞こえないようにロアは声を潜める。

「感づかれてる。神官たちが来るのは時間の問題だ」

『そうか。もう出るのか?』

「あぁ。必要な物は全て買ったからね。次の町の情報も手に入ったし……リィ!!」

ロアは駆け出した。