「今じゃ、ぼくたち魔女も白魔法が使える時代になったからね~適応能力って大事だね☆……そう思うでしょ、ミコさま」

彼女はニコニコ笑いながら振り返る。

そこには銀髪の男が鋭い目付きで立っていた。

「こんな街中に、しかも大神子の言葉を聞きに来るとはさすがだな!図々しい魔女め!!」

「ムフフ。だって面白そうだったんだもーん♪ぼくたちをこき下ろす言葉の数々!いやぁ~滑稽だったよぉ☆」

「愚かな魔女にはあの方の偉大さなど分かるはずまい。あの方はこの世界で唯一究極神術『ホーリー』を使えるのだ!そうすれば貴様らなどすぐに全滅だ!」

声を荒げるミコに少女は笑いを口に含む。一途に神術に酔っちゃってるなんて愚かで可愛らしいことだね。

「じゃあぼくは『メテオ』でも唱えちゃおっかな?ミコさまなら知ってるよね?究極の破壊力、唱えたら世界は3秒で灰燼だお」

クルンと袖の長いゴスロリ衣装を振り回す彼女は至極愉快そうだった。それが彼のカンを逆なでる。

「それを唱える前に貴様の息の根を止めてやる!」

鼻息荒く剣を構えるミコに彼女は嘲笑を浮かべた。

「己の力量が分からぬ愚か者にぼくは殺せないよ」

「…」

自分より小さな少女から放たれる殺意に少年は呼吸が奪われる。

身体を硬直させる少年に少女は肩の力を抜いた。

「ぼくを殺したいならもう少し心を鍛ておいで、ミコ見習いのジェイくん」

「何故俺の名を…」

驚くジェイに少女は人差し指を唇に当てて微笑む。

「魔女は物知りなのさ☆じゃあね~」

ヒラリとスカートを翻して魔箒に跨がった少女は颯爽と空の彼方へ去って行く。

その姿をただ黙って見つめるジェイは拳を固く握りしめた。

―必ず見つけてやる