「私は聞くのに飽きて手の爪をいじる。
すると、隣から紙が回ってきた。
隣を見ると、一樹君が「開けろ」って口パクで言ってる。
紙を開けてみると…
「さっきは急に腕掴んでごめんな。」
って小さいけど男の子っぽい字で書いてあった。
私は
「大丈夫だよ。リレー頑張ろうね!」
と、出来るだけ丁寧に書いて回した。
すると…
「聞いちゃいけないような気がするんだけど、お前何かあったん?
腕掴まれた後、すんげぇ泣きそうな顔してた。」
やばい…どうしよう。
なんかばれようとしちゃってるじゃん…。
この話は理子にもしてない。
一樹君に話しちゃっていいのかな…。
たまたリレーの代表に一緒になっただけの一樹君に…。
ふと、一樹君の顔を見上げると、とても、とても優しい顔をしていた。
返事を書こうとしたけど、書かなかった。
今あのことを思い出して泣くのは嫌だ。会議中だし。視線を集めたくない。
一樹君も何事もなかったように会議に耳を傾けていた。