視界はふるふる震えて、灰色の空ににじんでいった。
冷たいのか温かいのか分からない涙が、一筋流れた。
いつか先生にもらった、あの赤ペンは
私のお守りだった。
将来絶対に、お返しを先生に渡そうと思っていた。
――じっと耐えぬけ、奏美
そんな声が聞こえてきそうだった。
――前を向け、後ろを振り返るな
…そんなこと、私には難しいよ。
――もう無理しなくていいよ
なによ……矛盾してるじゃない。
『耐え抜け』と言ったくせに。
もしかしたら先生は
私のことなど心配していないのかもしれない。
忙しいもんね、先生は。
今まで頼りっぱなしでごめんね、先生。
それでも先生
「…せん、せ」
「奏美、安心しろ」
奏美side End