いま、わたしは部屋の壁に体を預けて座っている。
やや上を向いて天井を眺めたまま、固まっている。

さっきの電話は父からだった。父の言葉を一字一句覚えるほど、余裕はなかった。

とにかく、父はこう言った。

――お兄ちゃんが交通事故に遭った――

もう、逝ってしまった。わたしをひとり、この息苦しい家に残したまま。

「お兄ちゃん……」

わたしのつぶやきは、誰にも聞かれることなく消えていった。