取材も相次ぎバタバタしたけど、
ついに私は念願の
オーナーパティシエとして
就任した。



『ここからは好きにしなさい。もうここはあなたの店よ。経営も人事も全て、あなたに任せます。何かあればいつでも相談にのるわ。』



と、突然長谷川先生から新店を手渡された。



新店が立ち上がるまで、何かと細かい
部分まで私に相談してきていたのは
このためだったんだと、後でわかる。



間取りや工事にまで連れて行かれ、
『あなたならどうしたい?』と聞かれ
言えば知らない間に実現してた。



私と同期で、一番信頼していた仲間も
『新店がオープンしたら霧島チーフと一緒に切り盛りしてちょうだい』と流してくれた。



そして最後に、
『少し早いけど、出産祝いね』と
優しく長谷川先生は言った。



新店を作ると話が出た直後、私は
長谷川先生にだけ打ち明けた。



妊娠6週目。



私は準の子供を身ごもった。



飛び跳ねて喜ぶ準の姿は可笑しかった。