『あの、これを作った方にお会いしたいのですが。』



『あ、はい。少々お待ちください。霧島チーフ…!』



調理室にやってきた販売員の呼びかけに
反応する。



売り場の方へ出て行くと、40代~50代と
いった感じの男性がいて、名刺を差し出された。



よく見ると、雑誌記者だった。



『今度、スイーツ特集をメインに進める企画がありまして、噂が噂を呼んでこのお店にたどり着きました。スイーツを紹介すると共にパティシエの方も一緒に紹介するという特集なんですが、お忙しいとは思いますが、一度取材させていただけないでしょうか?ここのケーキ、私も食べたのですが感動しました!!』



『いや、あの…私…取材なんて……』



『いいわ。取材受けましょう。』



背後から出てきたのは長谷川先生だった。



『先生……。』



長谷川先生は後で私にこう言った。



『こういうのは利用しなきゃ損よ。あなたのブランドを全国に知らしめるチャンスじゃない。その雑誌が世に出たら忙しくなるわよ~!マスコミや雑誌は有り難く引き受けなさい。』



先生の言う通り、記事の載った雑誌
が出るやいなや、普段でも混む店内が
整理券を配るほどの大行列が並んだ。