『そんなことないない。』
左右に首を振りながら答える。
『でも、遊ばなかったのがエライ!そういうガラじゃないか。けど、ずっと彼氏つくらない時期あったじゃん。あれが不思議で仕方なかった。』
『あぁ、あれは…当時は夢が一番だったもん。絶対パティシエになってやる~!って野望抱いてたからね。』
そりゃあもう、男なんて目に入らないくらい。
『じゃあ正樹は初めて本気になった人?』
その一言に私の手は止まる。
忘れてた想いが脳を刺激する。
正樹とは、高校3年生から大学2年生
まで付き合っていた恋人だった。
高校3年の夏。
放課後の教室で、クラスの違う朋美を
待っていた時。
たまたま1人で机に座ってると、
ガラッと教室のドアが開いて視線を
向けたら、隣のクラスの正樹だった。
勢いよく私の目の前まで来て、強張る私
にこう言ったの。
『一目惚れしました!付き合ってください!』
正樹は高校2年の終わりに転校してきた
ばかりだった。