──キレイだね。
下にいる君に視線を落とした。
──友香。言い忘れたことがある。
──え…?なに…?
ベランダの手すりにもたれて君を
見つめる。
──俺、絶対諦めねぇから。
──じゃあ…私はそれを全力で阻止する。
──えっ!?なんでだよ!!
軽く突き放した方が楽だった。
クスクスとお互い笑い合う。
──バイバイ。大好き。
小さな声だけど、受話器から確かに
そう聞こえた。
何も答えずにゆっくりと手を振った。
生ぬるい風が吹き抜ける。
まるで、これから襲う2人の試練を
ほのめかすような、温かい風。
静かな幕開けだった。