突然投げ掛けられた挨拶に、面食らった。 にこっと笑ったそのあと、何とも言えない…艶のある流し目を見せた。 「田邉さん、見とれたんでしょ。」 後輩の幸也に茶化されて振り向くと、流し目の女はもう居なかった。 前の家の玄関に残る残像だけが、暑すぎる1日の陽炎のように揺れていた。