朝から、仕事を進める手捌きが違った。

時間が経っていかない。

夜になれば、鼓に会える。

メールを送ればいいのに、その返信を見たら絶対にもっと、気忙しくなる。

「田邉さん、何かいい事でもあったんすか?」

幸也が茶化すように聞いてくる。

「今日あの、鼓と飲みに行くんだよな。年甲斐もなく楽しみでさ」

34歳にして、初恋気分の俺に幸也は苦笑して頷いた。

「でも田邉さん…大丈夫なんすか?加那さんに殺されますよ」

「俺一人だけだろ」

分かってんだよ、そんな事は。

加那の怖さは俺が十分分かってる。