知ってるのはあの
“キリ”っていう名前だけなんだよね…。


「杏子?おーい、杏子ー
!!」


「へっ!?あ、えと、なんだっけ?」


思い出にふけってしまった(汗)


「杏子はなんでこの高校にしたか聞いてんの!」


「あぁ、そうそう!えーと…屋上!屋上に行ったら空とかながめが良くて
!!」


嘘はついてません!!


「それだけでここにしたの?」


「あ、まぁ…。」


バレた…?


「よくそれで受かったね。そうか、頭が良いのか!」


「いやいや、そんなことはないよ?絶対。」


そりゃーあの時は受かりたくて必死に勉強しましたが…。


「まぁ、とりあえず教室行こ!」


「うん♪」




教室の中は結構にぎやかだった。


2人で黒板に貼ってある座席表を見るとなんと、2人の席が前後だった。


「やった!あたしもう席替えしなくていいー♪」


「私もー!!」


すごい!


クラスが一緒で席まで近いなんて。


少しすると、入学式が始まった。




……はぁ、校長先生話長いなぁ。


「えー、それでは次に生徒会長からのお話です。」


もう話なんかいらないよ…。


「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。生徒会長の向井桐です。」


「「「キャーーー!!」」」


ふぉっ!!すごい…。


てゆーか……ん?


今、“キリ”って聞こえたような…。


さっきまで俯けていた顔をあげた。


しかし遠くて生徒会長の顔がわからない。


「この学校には、色んな楽しい行事があります。たくさん思い出を作って学校生活を楽しんで下さい。」


そう言って生徒会長はステージから降りた。


その後他の先生たちの話があり、入学式が終わった。



「はぁ…かったるかった。」


「だね。」


私なんか少し寝そうになっちゃったもん。


「でもさ、生徒会長すごい人気だよね!」


「ねぇ、生徒会長ってそんな有名なの?」


「そりゃそうだよ!」


梢は少し興奮しながら話し始めた。


憧れの存在と言われている向井桐先輩。


2年生で生徒会長をしている彼は“容姿端麗”、“成績優秀”、“運動神経抜群”おまけに優しくて頼れる…などなど、とにかくスゴイ人らしい…。


…でも世の中そんな完ペキな人なんていないよ。




すると、梢は呆れているのか大きなため息をはいた。


「杏子、相変わらず学校の有名人に疎いね。」


「え、そう?」


てゆーか、相変わらず??


「うん。小学校の時の池田とかさ。」


「…池田くん?とりあえず、モテてた子…とか?」


誰だっけ、てゆーかあんまし覚えてないんだよなー…。


「はぁー…ったく。」


いやいや梢ちゃん。そんな呆れたような目で見られても…。


すると、担任の先生が来てHRが始まり、委員会やらなにやら色々決めた。


しかし、何故か私が学級委員長になってしまった。




-杏子side-


はぁ、やっぱり学級委員断れば良かったなぁ…。


『このプリント3枚1セットでホチキスでとめておいてくれ。』


放課後、担任から雑用を頼まれたのだ。


やっぱりこういうのあると思ったけどさ…。


そう思っていると、何故か何もない所でつまずきプリントが散乱してしまった。


「あーもう……」


「大丈夫?」


……え?


1枚1枚拾っていると、男の先輩らしき人が拾ってくれた。


…い、イケメン!


きれいで整った顔。


茶色っぽい黒でさらさらな髪。


女の子より長そうなまつげと二重の目。


スッと通った鼻筋に
薄い形の良い唇。





「……い、おーい!」


「うぁっはい!」


「全部拾い終わったんだけど。」


ヤバい、見とれてた。


「すみません、ありがとうございました。」


「ちょっと!」


教室に戻ろうとすると、先輩に呼び止められた。


「…はい。」


何……?


「…いや、君、学級委員?」


「…そうですけど。」


「今度学級委員長たちの会議があるから忘れないようにね。」


そう言って先輩はにこっと笑って行ってしまった。


「あ、はい…。」


それだけ…?


まぁいっか。


プリント早く終わらせて帰ろっと。


しかし、枚数が多くて大変だったことはいうまでもなかった。





-桐side-


…正直驚いた。


ジーっと見られたからまた、色々言われるのかと思った。


実際、自分がそこそこモテてるという自覚はあった。


女子から話しかけられたり、告白も何回かあった。


でも、それは外見上の話でいつもただ周りに偽りの笑顔を見せてるだけだ。




だから、あの子…


成瀬杏子が俺のことを知らなかったことに驚いた。


…それに、あっちはあの日のことを覚えているのだろうか。


まぁ、これからが楽しみだなぁ~♪


そう思いながら帰った。