「し、親友です!」


嘘はついてない、うん。


断じて嘘じゃない!!


しかし、先輩はまた「ふーん」と言って、信じていないようだった。


しかも、何もかも見透かすような目で見ていた。


「まぁ、いいや。行っていいよ。」


「…失礼します。」


私はそう言って、生徒会室を後にした。





なんなの、あの人!


なんで私があんな奴の召し使いになんなきゃいけないの!?


…本当に行かなきゃいけないのかな。


覚悟って…?


はぁ、この先どうなるのやら…。





-桐side-

成瀬は怒ったように生徒会室を出ていった。


まぁ、確かに拒否権ない的なことだとか召し使いだとか言われたら誰でも怒るわな。


覚悟しろったって、何を覚悟するんだか。


そこらへん特に考えずに口から出ちゃったんだよな……。


まぁなんにしろ、からかうのは面白いからいいけどね。


今度はどうしようか…。





-杏子side-

4月も終わり、クラスも馴染んできた5月。


体育祭の時期がやってきた。


今日はまだ決めるだけ。


「じゃあとりあえず、やりたいトコに名前書いて。人数オーバーんトコはじゃんけんして下さい。」


体育祭実行委員がそう説明する。


体育祭かー…。


めんどくさいな。
何にしようか…。





すると、そこに梢ちゃんが来た。


「杏子は何にすんの?」


「んー、まだ決めてない。梢ちゃんは?」


「100m走。皆やらなそうだし。」


「そっか。うーん…」


どうしよう…


「杏子も100m走にしたら?小学校の時速かったじゃん。」


「小学校の時はね。今は運動部入ってないし、遅いよ。」


中学の時も吹奏楽だったし。


運動は体育の授業くらいだな。


「ふーん。でもさ、やらない?」


「うん、わかった。」


2人で黒板に書きにいったが、案の定、最初は100m希望の人は少なかった。





時は過ぎ、あっという間に体育祭当日になった。


「杏子、すごいじゃん!あん中で3位って!!」


100m走はプログラムの中で最初の方だった。


5人の中の3位って、微妙だなぁ…


「そうかな…」


「だって、全員運動部だし、あん中に陸上部いたんだよ!?その中の3位はすごいよ~♪」


「でも、梢ちゃんのがすごいよ。1位だもんね!」





バスケ部だからっていうのもあるけど、あの中で1位っていうのはすごいと思う。


「まぁね♪このくらい、当然!」


「ハハ…。」


梢ちゃんは、負けず嫌いだもんね。


「「「キャーーーーー」」」


うぉっっっ!


何ごと!?


皆の視線の先を見ると、そこには上半身裸で騎馬戦の準備をしている向井先輩がいた。






他にも、2年の男子全員がそうなのだけれど…


引き締まった体、程よい筋肉、オマケにあの王子スマイル。


目立たないわけがない。


「いやー、相変わらずすごいね。」


「うん…。」


実は裏のあるドS男なだけなのにね。


あのスマイルで一撃だもんね…。


「あ、向井先輩大将なのかな。」


「っぽいね。」


先輩は真ん中の騎馬の上に乗っていた。






ピーッと鳴る笛の合図で騎馬戦が始まった。


場内にうぉーー!!と言う声が広がる。


「なんか、すごいね。」


「暑苦しいだけじゃない?」


「梢ちゃん!」


確かに私もちょっとは思ったけど…←


「ハハッ…あ、そういえば、向井先輩とはどうなったの?」


「どうなったのって…」


あの日の後から、何回か呼び出されて雑用手伝わされて、しかも自分はあまりやらないで。


「最悪だよもう……」