成瀬は口をポカーンとあけていた。


ウケる、何このマヌケな顔(笑)


すると、成瀬は我にかえったのか、さっきの顔に戻った。


「あの、もう一度…」


は?もう一度?


いや、聞こえてただろ。


まさか、俺が言ったと思ってないのか?


「だから、俺の召し使いになれって言ってるんだけど。」





「あの、お断りします。」


…は?


何言ってんだ、こいつ。


この俺がなれって言ってんのに断るって……


……面白い。


「はぁ?断る?そんなのダメだ。お前に拒否権はない。」


「そんな~……」


「あっそろそろ授業始まるよ?」


俺はいつもの表の顔で時計を見ながらそう言い、その場を後にした。


これからが楽しみだ。





-杏子side-

数日後、何人かの同級生に先輩の本性のことを話してみたが、誰も信じてくれなかった。


梢ちゃんにも話してみたが……


「へぇ~、そうなんだ!逆に面白いじゃん。頑張って~♪」


と、面白がってるだけだった。


すると、放送がかかった。


《1年5組成瀬杏子さん、生徒会室まで来て下さい――――》


……ん?


「私?」


「1年5組の成瀬杏子って言ったらあんたしかいないでしょ。行ってこい!」





行ってこいって…


「一緒に来てくれないの !?」


梢ちゃんはめんどくさいと言って、シッシッと追い払うような態度をとった。


薄情者ー……


でも、私何かしたかな…


てゆーか、なんで生徒会室??


いろんなことを考えているうちに生徒会室に着いた。





コンコンッとノックすると、中から「どうぞ」と言う声がした。


「失礼します。」


ドアを開けると、中には向井先輩しかいなかった。


あれー?


ここでいいんだよね?


「遅い。」


言ったのはもちろん向井先輩で、偉そうに長い足を組んでイスに座っていた。


「あの、私を呼んだのってもしかして……」





「俺だ。」


やっぱり…


てゆーか、夢じゃなかった。


完全にあれは俺様だよね。


…じゃなくて、なんで呼ばれたかだよね。


「あの、私何かしましたか?」


「別に?」


「じゃあ、なんで呼び出したんですか?」


「あぁ…。そういう事か。」


まさか忘れてた?





「言い忘れてたことがあったんだ。」


言い忘れてたこと…?


「まず、俺が呼んだらすぐに来ること。」


……は?


「俺の言うことは絶対だ。」


へっ?ちょっと待って。


なんで!?


「一切逆らうことは出来ない。」


嘘!


でも、ちょっとくらい……





「逆らった場合、その時は…覚悟するんだな。」


「な、なんで、私がそんなことしなきゃいけないんですか!!」


「言ったろ?君は俺の召し使いだ。召し使いは主人の言うことを聞くもんだぞ。」


…何よ、この人。


この人のどこが王子様なの?


悪魔だよ悪魔!!


「知りません、そんなこと。じゃあ、失礼します!!」


そう言って、生徒会室を出ようとした。





「あぁそういえば、誰かに俺のこと言ってたみたいだけど…信じてくれる人いた?」


はっ?


なんで知って…


突然でびっくりして、思わず振り返ってしまった。


向井先輩はニヤリと笑っていた。


「その顔は…いなかったのかな?」


なっ…!


ムカつく!!


「い、いましたよ!」


「ふーん、誰?」