突然ガラッとドアが開き向井先輩が帰ってきた。


「お待たせ……って成瀬さん!?」


「あ、お帰りなさい。あと少しで終わりそうなんで。」


なんで、そんな驚いてんだ?


まさか、何か間違った!?


「…あの、何か違いましたか?」


だったら余計なことしちゃってるよね。


「いや、そうじゃなくて…。ありがとう。」


そう言って、先輩は私の頭をポンポンした。


「あとは俺がやるから帰っていいよ。…あと、これ。」


そう言って、先輩はお茶の入ったペットボトルを差し出した。


「お礼。かなりやってもらったから…。」


「ありがとうございます。じゃあ、お先に失礼します!」




「気をつけてね。」


先輩はニコッと笑った。


私は生徒会室を後にした。


いや~さっきの王子スマイルはかっこよかったな…。


ニコッて。


優しいし、さすがって感じだよ、うん。


なんか委員長になってよかったかも~。


こんな感じに浮かれてる私だったが、まさかこんなことになるとは思いもしなかった。




-杏子side-


「杏子~?まだ~??」


「ごめん、先行ってて!」


えーと……あった!


これから、生物の授業。


今日は実験するから移動しなきゃいけない。


そして、今教科書を見つけたところだ。


よし、まだ間に合うから急がなくていっか。


そう思い、教室を出て渡り廊下を歩いていたが……。





「…!」


ふと横を見ると、向井先輩が女の子といた。


あれは先輩と同級生といったところだろうか…


そして、あれは絶対告白だな、うん。


てゆーか、なぜ私は隠れたんだろう…


ちょっとくらい、見てもいいよね!


私はそ~っと見てみた。


何やってんだろう…


あっ女の子泣いちゃった!


ヤバい、こっち来る!!


私はまたサッとしゃがんで隠れた。


女の子は走っていってしまった。


うわー、ありゃ振られたな。




先輩は…?


また私はそ~っと見てみた。


…なんかよくわからないな。


もう一度先輩を見ると、先輩はこっちを見ていた。


うわわわ、ヤバい!


急いで私は隠れた。


どうしよう、バレたかな。


てゆーか、早く実験室行かなきゃ。


でも、今出てったら…


あー、もーー!




「成瀬さん?」


え……?


…空耳?


私はそ~っと後ろを振り向いた。


「…向井先輩!」


振り向くと、ニッコリ笑っている向井先輩がいた。


「君、盗み見は良くないよね?」


「ははははい。」


完全バレてらっしゃる!


てゆーか、背後にどす黒いオーラ見えるの気のせい?


「君、俺の召し使いになれ。」


……はい?





…いや、待てよ。


聞き間違いかも。


「あの、もう一度…」


「だから、俺の召し使いになれって言ってるんだけど。」


…これ、向井先輩が言ってるんだよね?


「あの、お断りします。」


「はぁ?断る?そんなのダメだ。君に拒否権はない。」


な、なんと……!


「そんな~……」


「あっそろそろ授業始まるよ?」


「えっ」


ほんとだ!


「じゃあ、これからよろしく。召し使いさん♪」


そう言って、行ってしまった。


てゆーか、いつの間にかさっきの話し方に戻ってる。


……あれ?


もしかして、あれが先輩の本性!?





-桐side-


「好きです!」


昼休みに呼び出され、今こうして告白されている。


「…ごめん。今は、誰とも付き合う気はないんだ。」


告白されるたび、こうして断っている。


目の前にいる女は少し涙目になっている。


「あたしじゃ、ダメ?」


「……ごめん。」


そう言うと、その女は走って行った。


はぁ、俺今の女知らないんだけどなぁ…


ふと渡り廊下の方を見ると誰かがサッと隠れたのが見えた。


……誰だ?


俺は相手にバレないように静かに近づいた。





……成瀬?


隠れていたのは、成瀬だった。


ばっちりさっきの見たんだろうな。


……!


いいこと思いついた♪


「成瀬さん?」


成瀬はビクッとなって、ゆっくり振り向いた。


「向井先輩!」


少しからかってみようかな。


「君、盗み見は良くないよね?」


「ははははい!」


そんなに驚くことか(笑)


これはチャンスだな。


そう思い、こう言った。


「君、俺の召し使いになれ。」