「あぁ、成瀬にメールしたけど来ないから直接成瀬の教室に行ったんだけど、徳山がまだ戻って来てないって言うから俺が来たってわけ。」


「あ、そうだったんですか……」


わざわざ来てくれたんだ……


……ん?


「メールしたってことは私に何か用事があったんですか?」






「…いや、特に用事はないんだけど。」


何故か先輩は顔を背けた。


どうしたんだろう…


「とにかく、帰るぞ。家まで送る。」


そう言って先輩は優しく笑い、私の手を引いた。


ドキッ


「あ、はい…。」


今わかった。


先輩のこと、好きなんだ……


その後、お互い一言も話さなかった。






‐杏子side‐

あれから何週間かがたち文化祭当日になってしまった。


ということで、文化祭開幕です。


「すいませーん。」


「あっはーい!」


私のクラスは結構お客さんが入ってる。


何故かわからないけど、言われたら一緒に写真を撮ったりもする。


私もそれで何回か呼ばれた。






「一緒に写真撮って下さい!」


ほら、また。


「成瀬杏子さんですよね?」とか聞かれたりして写真を撮り終えた。


何人かそういう人がいてびっくりした。


なんで私の名前知ってんだろう……


「ふぅ…。」


そこに梢ちゃんが「そろそろ交代だって。」と、声をかけてくれた。





午後は梢ちゃんとまわることになっている。


「そういえばさ、あんた明日どうするの?」


「梢ちゃんは?」


「明日は午前中はずっとバスケ部のに出て、もしかしたら午後もかも。」


「そっか。」


どうしようかなぁ……


「会長とはまわらないの?」


……えっ?






「いやいや、まわらないよ!」


先輩人気だろうし、そんなところに誘いに行ったら女の子たちに睨まれちゃうよ。


「なんで?嬉しいと思うよ?」


「いいよ、ゆっくり1人でまわる。」


「そっか。じゃあ、今日は色々まわろう!」


「うん♪」


「さっき杏子すごい人気だったね!」


「名前知られててびっくりした。梢ちゃん女の子たちからすごい人気だったよね(笑)」


「女の子からってのはびっくり(笑)」


そんな感じで、話しながら見てまわった。






文化祭2日目です!


今日梢ちゃんはバスケ部の方に行ってるし、クラスの方の当番はないし。


私はもうぶらぶらしている途中です。


暇だなぁ……


先輩は人気だし、生徒会のこともあるもんなぁ…


でも、ちょっとだけ先輩のクラスのみたいな…


…よし、行こう。






確か、人探しだっけ?


何かの役になってんだよね。


5人全員のスタンプを集めると景品もらえるって言う……


先輩も無理やりやらされたって言ってたけど、何の役なんだろう…


…ん?


近くでキャーキャー女子たちの騒いでる声が聞こえる。


なんだろう……






……!?


そこには、白衣を着て、メガネをかけた医師の格好をした先輩が大勢の女子に囲まれていた。


いた!


けど、近づけないしあの中には入れない…


それに、なんか心がチクチク痛む。


先輩と目が合う前に他のところに行こう…


私はとりあえず、この場所から離れた。