「またさっきの奴らを見たら気分が悪いからな。それに、お前の大好きなアイスはここにないし。食べたいんだろ?」
「えっ、まぁ……」
あたしのこと考えてくれたの……?
―――ドキッ
……ん?
少しいいかもって思ったのは、気のせい?
「もう平気か?」
「あっはい。」
いや、わからない。
……でも、嫌いではないということがわかった。
この後、遊園地を出て、お昼を食べたりアイスを食べたり、他にも色々見てまわったりして挙げ句の果て、家まで送ってもらってしまった。
‐杏子side‐
それから数日後のことだった。
突然、梢ちゃんから電話がきた。
『もしもし、杏子?』
「うん。どうしたの?」
『この前のデート、どうだった?』
………急だなぁ。
「いきなりそれ?」
『えっだって、早く聞きたかったんだもん。』
……はぁ。
聞きたかったんだもんって……
あの時のことを話すと、梢ちゃんは「会長やるなぁ…」と呟いていた。
「あたしの話はもういいよ。梢ちゃんの話があるんじゃないの?」
『あっそうそう!もうすぐ花火大会あるじゃん?一緒に行かない?』
「うん、行く!」
そういえば、今度の日曜日に花火大会だったっけ。
『よし、決まり!じゃあ浴衣着てきてよ?』
「うん、わかった。」
『じゃあ、またメールするね!』
「は~い。」
あー楽しみだなぁ……
花火大会と言えば、屋台でしょ。
屋台と言えば、りんご飴にたこ焼き、焼きそばに綿あめ、あと金魚すくいに………
あっ、浴衣出しとかなきゃ。
梢ちゃんと花火大会久しぶりだしなぁ……
梢ちゃんの浴衣姿、絶対いいよね。うん。
花火大会当日になった。
……何故だろう。
「よっ杏子ちゃん!」
梢ちゃんだけじゃなく、向井先輩と柊先輩がいた。
「梢ちゃん、ちょっと。」
「ん?」
あたしは小声で言った。
「なんであの二人がいるの?二人だけで行くんじゃなかったの?」
「え、一緒に行こうとは言ったけど二人だけとは言ってないよ。」
……あ、確かに。
でもでもでも!
「なんで先輩たちなの!?」
「あ、言ってなかったっけ?あたし、柊と付き合ってんの。」
「聞いてないよ!」
まさか、付き合ってたなんてそんないきなり……
……ていうか、柊って!
「いやぁ、杏子誘った後に柊から誘われちゃって。」
まぁ、それはしょうがないけど……
「でも、なんで向井先輩もいるの?」
「あぁ、柊に杏子のこと言ったらじゃあ桐連れてくって。」
はぁ………
確かに二人の邪魔はしたくないし、せっかく来たわけだしね?
でも、ねぇ……
「じゃあ、あたしたちは行くから!」
「えっ!?」
も、もう別れるの!?
「じゃあね♪」
そ、そんなー……
「俺じゃ不満か?」
「ふぉっ!」
先輩、いつの間に!
「そんな驚くことねぇだろ。」
「あ、すいません。」
なんであたしが謝ってんだ……
「…まぁ、せっかくだし色々見てまわるか。」
やっぱりそうなりますか。
「何か食べたいものある?」
「…じゃあ、リンゴ飴。」
「ん、じゃあ行くか。」
そう言って、さりげなく手をひかれた。
意外と、嫌ではないと思う自分がいる。
先輩は不意にこう言った。
「…浴衣、似合ってんじゃん。」
「……えっ?」
あたしは聞き間違いかと思い、聞きかえした。
でも先輩は、そのまま何も言わずただあたしの手をひいた。
そして、あたしはまた遊園地の時みたいな気持ちになった。