元からピークに達していた眠気と、セックス後の気だるさで、あたしはしばらく動けなかった。
雪ちゃんはずっとそんなあたしの髪の毛をいじっていた。
「あ、枝毛発見」
うるさい、馬鹿。
発見すんな。
「夏美ちゃん、目がとろーんとしてるね。そんなんで睨んでも怖くないよ?」
雪ちゃんは煙草を咥えてくすくす笑う。
あたしが何で怒ってんのかとか、一切気にしてはくれない。
ムカつく。
「ねぇ、あたしが本気で雪ちゃんのことが好きになったからカノジョと別れてとか言ったらどうすんの」
「困るね、とりあえず」
「あっそ」
「だってさぁ、俺と夏美ちゃんがマジで付き合ったって、多分夏美ちゃんのこと泣かせることしかできないから、俺」
それなのにあんた、あの時あたしにプロポーズとかしたの?
身勝手。
馬鹿。
ろくでなし。
雪ちゃんに対する嫌味なんていくらでも湧いて出る。
「もういいよ。何かもう、全部どうでもいい。あたしはあんたとも修司くんとも付き合わないで、さっさと別のいい人探すから」
「あらら、今度はそうなっちゃいます?」
なんてまた笑いながら、余裕だとでも言いたげな顔。
でももう殴ってやる気力さえないので、好きなようにさせといた。
そうだよ、いつだってあたしは、雪ちゃんを縛ることはせず、自由にさせてあげていたのだから。
今日の戯れ言は、すべて帰って寝て忘れよう。
それがいいし、それでいい。
あたしは何もかもを睡眠不足の所為にして、雪ちゃんに頭を撫でられながら、瞼を閉じた。